持続可能で高付加価値な茨城農業を
創る:レンコン農家6年目、これからが本当の勝負! JAなめがたしおさい 小城謙治さん

茨城県の南、北浦と霞ヶ浦に挟まれたところの行方市、小城さんのお宅はレンコン田に囲まれたところにポツンとありました。まだ小さな2人のお子さんと奥さんとの4人家族、自宅のすぐ前に自分のレンコン田が広がる場所で農業を営んでいます。

■やってみたかったのは直接的な農業
 小城さんは農業関係の学部を卒業して、わたしたちが働くJAグループ茨城中央会で仕事を始めました。仕事にも慣れてきた頃に、フツフツと自分のやりたかったことは机に向かって農業の支援をすることだったのかと疑問に思い始めます。「間接的に農業に関わっていた訳ですが、もっと直接的に農業をと思いました」と語る小城さん、学生時代からやりたかったのは農業だったと気づき、仕事を辞めて農家に転身しました。自分でもできそうだと思わせてくれたのが、JA時代に話を聞いたり、仕事をみていたレンコン農家さんだったそうです。現実問題として就農時に初期投資が少ないこと、毎日収穫しなければならない作物と違って、レンコンは割とマイペースで収穫ができることがわかったことも背中を押してくれたそうです。

■地域と農家の大切さ
 いざ就農を決めても、誰もが地域の人たちとうまくやっていけるのかを一番に心配します。特に代々の農家を継いででなく、他から引っ越して来た人にとっては不安でたまりません。小城さんの場合、JA時代にお世話になった方々がいたことで、地域に溶け込んでいけました。その方々のサポートを受けて地元に溶け込み、家を建てて、家の近くにたまたま離農する人のレンコン田を60a借りることができ、残りの40aは自分で開墾しました。最近では近隣の若手農家と『ロータスルーツ育成会』という組織をつくり、研究や地元レンコンを盛り上げていく活動をしているのだそうです。育成会では、試験圃場をつくり、施肥量を変えた実験や植える感覚を違わせた時の収穫量の変化などの研究もしているようで、「この取り組みを同じ若手とやれていることが楽しみで」と語っていました。

■肝心な資金繰り
 地域への溶け込みもうまくいったものの、生活をしていかなければなりません。タネを蒔いてすぐに収入につながるわけではないので、まずレンコン作りを学ぶ必要があります。小城さんは就農1年目、青年就農給付金(現在は農業次世代人材投資資金)の準備型の150万円を使ってレンコン作りの技術を学びます。継続して青年就農給付金の開始型で年間150万円の補助を手にして2haまで圃場を拡大、なんとか軌道に乗せることができたようです。さらにそこには、奥様の収入もあったから助かったと話していました。

■家族と一緒に過ごす時間
 インタビューのあちこちで、奥様のことや子供たちの話をしてくれました。「農家になったメリットを一番感じるのが達成感です。さらに青空の下で仕事ができることがこれ以上ない喜びです」「毎日、子供たちと一緒にご飯を食べて、お風呂に入ったりする時間が作れているのが魅力です」。
 近い将来、奥さんと一緒にキッチンカーで自作オリジナルのレンコン・メンチカツを販売する計画を持っています。奥さんが作ってくれるレンコンを使ったメンチカツが絶品で、これなら売れる!とデビュー機会を狙っているようです。実現した際には、またJAグループ茨城Webサイトで紹介させていただきます。


【農家になるための根っこ】かつぎや入江商店 入江紫織

 レンコンは、英語でlotus(蓮)root(根っこ)と呼ぶことを小城さんから教わりました。「ロータスルーツ育成会」を若手農家で立ち上げたという話から、お恥ずかしながら初めて知った英語でした。小城さんは、JA茨城県中央会の職員を勤めた後、農家に転身されました。中央会は茨城県に17あるJAの司令塔。東京の台所ともいわれる茨城県の農業情勢を把握し、JAから届く現場の声をしっかりと取りまとめ、方向性を示す重要な役回りです。
 新規就農者にとって、「何を栽培するのか」「誰を師匠とするのか」を決めることは誰もが突破しなければいけないステップであり、そこがしっかりせずに挫折したり足踏みしたりする方も多いと聞きます。小城さんは、その点では絶好のポジションにいらっしゃいました。農家に憧れ、千葉大学の園芸学部を卒業。中央会で茨城県の農家組織「青年部」を担当し、県内で活躍する同世代や少し年上の若手農家と交流する機会に恵まれ、何を栽培するのかを考えたそうです。その中で青年部の参与であった平塚さんに出会い、平塚さんからレンコン栽培を学びました。
 レンコンを選んだ理由として小城さんは、①初期投資が少ない②収穫のペースを作物に合わせなくてもいい――の2点を挙げられました。何千万円という初期投資をして、夏は炎天下で収穫作業に追われる。そんなイメージが「農家になるデメリット」として挙げられがちでありますが、数々の農家から話を聞く中で〝そうではない選択〟を見つけました。そして平塚さんという師匠に出会うことができた。
 まさに中央会という場で農家になるためにroot(根っこ)を育みながら広げ、行方市でレンコン農家になると決意した小城さんを心から応援したいです。

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