持続可能で高付加価値な茨城農業を
創る:JA常陸 奥久慈枝物部会 柳田雄介さん

茨城県常陸大宮市にJA常陸奥久慈枝物部会があります。枝物は農畜産物に含まれ分類されていて、茨城県が全国一位の生産高を誇っています。生産の中心奥久慈枝物部会で、就農5年目となる柳田雄介さんに話をお聞きしました。

奥久慈枝物部会 柳田雄介さん

(奥久慈枝物部会 柳田雄介さん)

Q:就農経緯を教えてください。
A:5年前に千葉県から家族と共に移住してきました。それまでは自営での建築業を営んでいましたが、40歳になって体力的にもずっと継続できる仕事を求めて農業を考えました。ここ常陸大宮市にいる義理の兄が枝物栽培をしていたこともきかっけとなりましたし、妻も農業に興味を持って「私もやりたい」と言ってくれました。

Q:最初から枝物を選んだのですか?
A:違います。誰もが考えるように無農薬、有機栽培での野菜農家を目指したのですが、調べて人から話を聞くうちに、自分に本当に合っているか不安でした。そんなときに義理の兄から当時の枝物部会長だった石川幸太郎さんを紹介いただき「耕作放棄地を活用し、同時に地域を盛り上げていく」という志に共感し、枝物栽培をやることを決心しました。

Q:柳田さんにとっての枝物の魅力とは?
A:何よりの魅力は四季折々の変化を感じられるところです。そして4町7反ある畑でも、枝物なら出荷時期を自分で決められます。例えば1年収穫を伸ばして2年ものとして販売するとか、自分で消費者が喜んでくれるアイデアをカタチにできる部分も魅力的だと感じています。人によって中心の枝を切って横に伸ばしていって売る人もいれば、全体を大きくして売る人もいます。どういう使われ方をするか、どんなふうに飾られるかをイメージしながら出荷する形を自分なりに考えていきます。そんなことを考えている時間も結構面白いと感じています。
 また、日々の仕事に手作業が多くて、一気に規模を広げれば収入が上がるというわけでもありません。その代わりに長くやっていけるのも枝物だと思っています。

Q:どういった種類の枝物を扱っていますか?
A:正月用に「奥久慈桜」として出荷しているオカメザクラ、ハナモモ、サンゴミズキ、コニファー類のブルーアイスはクリスマス用のリースなどに使われるものです。ヒメミヅキや柳類なども栽培しています。

Q:実際に5年やってみてどうですか?
A:一番印象に残っているのは最初の1年間、研修をしていた時のことでした。農業自体が初めてだったので、刈払いの経験さえありませんでしたから。自分の畑で本格的にやり始めた後も、何より恵まれていたのは先輩たちが販売先含めて全部環境が整っていたことです。農協に運びさえすれば、あとはやってもらえる環境は非常にありがたかったです。
 最初に枝物を始めた石川幸太郎さんたちは、販路を見つけて自分でトラックに枝物を積んで売りに行ったりしていたそうです。そうしてもらったことで、今は枝物を育てることに集中できています。

奥久慈枝物部会の石川さんの畑はまるで桃源郷のような華やかさでした

(奥久慈枝物部会の石川さんの畑はまるで桃源郷のような華やかさでした)

Q:枝物部会としては、どういう成長のイメージを持っていますか?
A:現在は人数も増えて順調に収穫量を増やせています。それでも平均年齢は高く、先輩方が徐々に離れていった時どう世代交代していけるかが、僕らに課された課題だと思っています。
 生産だけでなく、枝物の魅力PRのために自分たちでやっているのは、今年の4月初め県庁に飾った桜のような大きな生花のイベントや、直販としてデーパートなどでイベント・ブースを作ってもらい、着飾って切花を売っていくようなこともしています。今後はこういった活動を東京などに広げてPRしていきたいと思っています。

Q:今後就農しようと考えている人へ、メッセージをお願いします。
A:40歳まで建築業をやってきて、それから枝物という農業の世界に転向して感じたのは、家族と一緒にやれている喜びです。同時に、家族の協力は大切だと思います。ぜひ家族を持って農業を一緒にやってください。
 それと自分は千葉から引っ越してきた時に中古住宅を購入してリフォームして住みはじめました。そうすることで地域の人から認めてもらえたとも思っています。地域の方々と一体になって農業をしていくという態度をカタチにしていくことも大事だなと思います。

Q:最後に柳田さんの夢を教えてください。
A:5歳になる娘が、一緒にやりたいと言ってくれるような農業をやることです。それはイコール若者にとってもやってみたいと思う魅力的な農業だと感じるので、それを枝物で実現したいなと思っています。

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