持続可能で高付加価値な茨城農業を
創る:JA水戸 八木岡慎さん

八木岡慎さんはこの春に東京農業大学を卒業しました。学んだのは北海道網走にあるオホーツクキャンパスでした。しかしコロナ禍でのオンライン授業が長く、過去にない学生生活を経験した貴重な世代の一人となりました。

祖父、両親が水戸市で営んでいた農業が縮小状態の中、3人兄妹の末っ子が専業農家の道を歩もうとしています。なぜ最初から自宅での1人農業を選んだのかを聞いてみました。

 Q:なぜ単独で農業をはじめようと思ったの?
 A:茨城にいた時は実家が農業って言わなかったのに、北海道に行ったらためらうことなく農業を話題にできました。みんな一次産業に誇りをもっているような空気だったので、気が付くと本気で考えられるようになってました。

 Q:自宅での農地ってどのくらいある?
 A:田んぼが3ha程度あります。コロナ禍で2年間水戸に戻ってオンライン授業受けながら自分の家の田んぼで稲作をやってました。丁寧にやっていると周囲で評判になっていたらしく、次々と「うちの田んぼもお願いできないか」と頼まれるようになりました。父はいちご農園を中心にやっていたので、頼まれるうちに機械も足りなくなって修理して使ったり、中古農機具をアルバイト代で買えるくらいの金額で購入したりして使ってました。いつのまにかその修理が趣味にもなって現在に至ったという感じです。

 Q:いま、どのくらい作業機があるの?
 A:トラクターが6台になって、田んぼは自宅周辺に10haと他にちょっと遠方で刈り取り委託されている田んぼが30ha弱あります。自宅周辺の水回りは車とバイクも好きなので苦にならずやれています。パイプラインでの給排水ばかりでないので、夏は頻繁に田んぼに出かけて水回りの管理をしてます。なんせ水の取り合いも発生するので(笑)

 Q:本格就農の計画を教えてください
 A:隣に住む親戚が従業員10人程度抱えて露地野菜栽培をしていて、高齢化を理由に引退するのを機に跡を継ぐことになりました。白菜、キャベツ、ネギ、ブロッコリー、カリフラワー、トウモロコシ6種類作っているのですが半数はビジネスとして厳しい状態です。例えば収益性の薄い品種は他のものに転換するとか、現状ハウスを使って促成栽培にするなど付加価値を高めて収益を得られるモデルに転換していこうと考えています。田んぼの受託も増えているのですが、条件が悪いところもあり、WCS(ホールクロップサイレージ)含め転作を考えていくつもりです。

 Q:この場所は那珂川河川敷ですね
 A:はい、100haあって町内では若手農家は私を含めてたった2軒、他も含めて高齢者が多いため、集約・継続ができればいいなと考えています。土地的には肥えていていい場所です。ここを中心に同じ考えを持つ若手が集まって農業が拡大できていくといいですね。委託されることは増えましたが、これを合理的に作業できる環境作りが今後の課題です。

 Q:だいぶ農機具が多いけど・・・
 A:昔から機械を触っているのが好きなんです。だからドライブハローや畦塗り機などは鉄くずやさんからタダ同然で譲ってもらって、修理して使えるようにするのが趣味になっています。自作した除草剤散布マシンは傑作だと思っています(笑)

ありがとう、ぜひ頑張って夢をかなえてください。

もうひとり、ちょうど泊りで遊びに来ていた東京農大の先輩農家がいたので、こちらも取材してみました。24歳の倉林蓮さんは埼玉本庄市の大規模農家に従業員として就農して2年目だそうです。

 Q:どういった経緯で就農したのですか?
 A:40haの田畑で米、麦を二毛作で作っています。冬の間はキャベツ、レタス、ロマネスコなどの露地野菜を育てています。雇い主の農家に後継者がいないので、ゆくゆくは後継者として続けていくつもりです。両親はまるで農業に関係なく、自分は水産学部卒業です。もともと水族館で働きたくて入学したのですが、水族館での求人を聞いたら絶望的で(笑)。慎くんと一緒にラグビーをやり、ホタテ貝の収穫などのアルバイトをしていて体を動かす喜びを感じ、これは農業が天職だと決めました。今はすごく満足しています。

 Q:実際にやってみてどうでした?
 A:自分でやりたかったのは稲作、いざやるとなればコンバインや乾燥機、田植え機と購入すべき農機具も多く、膨大な資金が必要でした。それで第3者継承を選ぶことでクリアできるのでは、と感じています。175馬力のニューホランドやコンバイン、乾燥機が最初から揃っているのは魅力的です。機械は大好きなのでワクワクしながら仕事しています。

 Q:就農する時に迷いはなかった?
 A:ありませんが、両親、祖父母には反対されました。その世代が考える農業のイメージはだいぶマイナスですね。自分のところでは契約栽培やコメの自家買いしてくれるところがあって、安定しているのですが、世代が変わったときの売り先や借地の心配はあります。農業の知識的なところでは、専門に学んでいないという不安はあるし、経験も少ないです。そういうところで慎くんの方が経験豊かで、いい刺激になります。後輩にも茨城の農業にも負けないように頑張ってやっていきます。

(レタスの収穫に忙しい八木岡さんの先輩、倉林蓮さん)
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