持続可能で高付加価値な茨城農業を
創る:茨城名産干芋つくり 大洗・幸重

JA水戸の直売所などで『幸重(こうじゅう)』という屋号で干し芋を販売している小野瀬宏幸さんは、JA茨城県青年連盟の副委員長でもあります。

水戸市の東、太平洋に面する大洗町で代々の芋農家を営む小野瀬さんは5代目にあたります。30年以上前のこと、お父さんが干し芋の加工を始めたことがきっかけで、甘藷(さつまいも)の生産から加工、販売までを一貫して行う現在の『幸重』に至ったそうです。

人気が高まる一方の干し芋は茨城が国内の9割以上を生産する特産品、特に大洗町に隣接するひたちなか市ではかなり力を入れていて、2010年には日本を代表するデザイナー佐藤卓さんと共同して『ほしいも学校』を展開、2011年度のグッドデザイン賞を受賞しています。
http://www.hoshiimogakko.com/archive/hosiimo_top.html
また、最近では「ほしいも神社」がテレビやSNSでの話題になっています。
https://horide-hachiman.com

干し芋が茨城の特産品として年々伸びている要因の一つに「紅はるか」という品種の誕生があります。2010年に開発登録された「紅はるか」は黄金色に輝く色がきれいな甘藷で、追熟(収穫後に甘くなること)しやすく、加熱・乾燥するとさらに甘くなるという干し芋にうってつけの品種です。無添加で糖度が60度以上!にもなる「紅はるかの干し芋」は、まさに天然のスイーツです。土地をあまり選ばず作りやすいのも特徴で、茨城のほか鹿児島、大分、宮崎という九州地方でも生産されています。

小野瀬さんの社会人スタートは地元を離れてサラリーマン、それが2011年の東日本大震災で被災したことをきっかけに実家に戻り代々の芋農家を継ぎました。震災後、風評被害や外国人材を含めて従業員の確保も難しい状況の時、5代目の息子が戻ってくれたのはお父さんとしても嬉しかったそうです。

小野瀬さんも加わって干し芋の一貫生産販売事業を進めてきた中で、特に力を入れてきたことが3つあるようです。

1つ目は販売ルートの拡大です。JA等の直売所や自らのHPなどを使った通販に加えて、大洗町役場が立ち上げた「大洗ブランド認証品 アライッペのこれだっぺ」に2015年に登録、町内の土産物店などで広く取り扱われています。
https://www.oarai-info.jp/page/page000590.html

また、ガルパン(ガールズ&パンツァー)の聖地でもある町のふるさと納税返礼品にもラインナップされています。8,000円で800gから40,000円で4kgまで、納税額に合わせた『幸重の熟成紅はるかほしいも』が大いに売れているそうです。

2つ目は、需要にかならず応える安定生産供給。甘藷の栽培面積拡大と共に、干し芋を乾燥する大規模設備を2機導入、天候に左右されず品質の安定と安心度を上げることができたといいます。「幸重の干し芋が欲しいのに売り切れ!」状態をできるだけ無くすことは非常に重要だったようです。

そして3つ目は地元に対する雇用の確保です。小野瀬さんは、「大洗町やその周辺の人たちを外国人研修生と共に雇用していることで、干し芋の一貫生産販売事業が地元に貢献できている実感が湧く」と言います。漁師町でもある大洗町は、人と人とのつながりを大事にする空気に包まれています。そんな中で雇用創出ができていることは自らのモチベーションにもつながっているようです。

小野瀬さんの干し芋作りの現場を動画にまとめています。収穫動画と共に、ぜひご覧ください。

■持続可能で高付加価値な茨城農業を創る:茨城名産干芋つくり 大洗・幸重

 
■【収穫シリーズ】甘藷(かんしょ)の収穫

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