- 農業関係
持続可能で高付加価値な茨城農業を
創る:JA常陸 つづく農園
茨城県水戸市から那珂川に沿って40分ほど車を走らせると、常陸大宮市の旧御前山村に着きます。つづく農園は御前山を背に蛇行する那珂川が見える場所に位置していて、約35aのビニールハウスでいちご栽培と直売所やJA常陸での販売を行なっています。
つづくさん(本名は都竹大輔さん)は今50歳、17年前までは建築関係の会社で働いていました。奥様と結婚したのちに、老後は悠々自適なシニアライフを自然豊かな場所で満喫しようと考えていたそうです。でも冷静に考えると老後には体力も財力も衰えていく、やるなら今だと思いつきます。実家が旅館だったこともあって、まず思いついたのが那須あたりでのペンション経営でした。そしてその物件を見にいく途中で現在の御前山を通った時大きな出会いが訪れます。「綺麗な場所だなぁ・・・ここで暮らしたいな」という気持ちが湧いて、まず場所がここならペンションより農業だと決心したそうです。
それから市役所を訪問、後の農業の先生となる人物に出逢います。当初ブルーベリー栽培をイメージしていたのですが「収穫から安定収入までに5年かかる、それならいちご栽培を1年教えるからそれをやらないか。いちごなら2年目から収入になる」と諭され、いちご農家を目指します。
ビニールハウスや農業資材、農機具を揃える初期投資は当時で2千万円強、これを無利子の支援金を活用して自営による農業を始めます。いずれ都会で家を買うつもりでいたので、それを回しただけと自分に言い聞かせることが不安を無くしたと語っていました。
現在は順調に事業を伸ばし、スマート農業(*)に力を入れています。常陸大宮市からの支援を受けて、近隣のいちご農家と作った部会と共に高効率なスマート農業を模索しはじめています。「奥久慈いちご研究会」と名づけた部会には常陸大宮市から9名、大子市から3名の計12名のいちご農家が集まり、そのうち9名は新規参入者だそうです。ハウス内の環境データをセンシングし、ハウスの開閉を自動化すると共に、水や温度の管理を自動化しています。また地域と連携して、道の駅かわプラザの集客予想データを共有してもらうことで、出荷数を予測、フードロスを削減する効果が出始めました。現在はカメラを使った画像処理でいちごの生育状況を把握、IoTを使った効果を使っていない他のハウスとデータで比較できたり、AIを活用した予測に役立てる研究を進めています。
収穫をしてくれている従業員へもサポートスーツを用意していて、かがんだままでの収穫作業でも、腰への負担を大幅に低減できていているようです。さらに収穫ロボットの実証実験などへの積極的に場所を提供し、これも昨年テレビ報道されていました。
住んでみたいと思う綺麗な町と偶然出逢い、そこから農業を始めました。この場所は自然豊かなところではあるものの、大型台風などで想定外の水害も経験しています。でもつづくさんは、行政などの支援を得て、ゼロベースで次の農業のカタチを模索してきました。周囲にもつづくさんに「続く」ぞ!と集まった人たちが増え、新しい農家が生まれています。
つづくさんは、今後の夢を、こう語ってくれました。
「私の夢は、常陸大宮をいちごの新しい産地にすることです。国道123号線沿いをいちご街道にすることです」
自然豊かな美しい場所で、きっとこの夢が叶っていくだろうなと感じることができた取材でした。
(*)スマート農業は、農林水産省「スマート農業技術の開発・実証プロジェクト」(事業主体:農研機構 実証代表機関:茨城県農業総合センター園芸研究所)の支援により作成しています。
【課題名】直売イチゴ経営におけるスマートフードチェーン構築によるデータ駆動型高収益経営体系の実証(R2~3年度実施)
■つづく農園:http://www.tsuduku-farm.com/
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