平成24年11月20日放送

妊娠を安心して過ごしていただくために
  土浦協同病院
産婦人科 遠藤 誠一
司会:

妊娠されると喜びと同時に様々な不安を抱えてくる妊婦さんが多いと思うのですが、診察する際に良く質問されることはなんですか?

遠藤:

患者背景により質問は多岐にわたりますが、一般的に妊娠時期によって質問内容も変わっているようです。20週前後までの妊娠初期、35週前後までの妊娠中期、そして分娩までの妊娠後期とおおまかに分けると、妊娠初期は妊娠を知らなくて薬を内服してしまった、レントゲンを撮ってしまった、軽度の腹痛、出血、つわりで体重が激減してしまった、耳鳴りめまいがするなど。妊娠中期は安定期にも入りある程度妊婦さんも落ち着いてすごせるようですが、便秘で苦しくお腹がはる、出血する、体重が増えすぎた、運動をしても良いかなど。妊娠後期ではいよいよ出産準備ですが、お腹が大きく苦しくて寝られない、どのようになったら病院に連絡すればいいのかなどがあるようです。

司会:

妊娠時期によって訴えも様々のようですがそれぞれ具体的にお話しください。

遠藤:

まず妊娠初期です。薬やレントゲンの影響ですが4週以前だとall on noneの法則と言い流産しなければ奇形の心配はないと解釈します。それ以降4週から10週までを臨界期、特に4週から7週までを絶対過敏期と言い外部の影響を受けやすい時期になります。相対的に危険性は高まりますが、それでは実際に薬やレントゲンの影響が高いかというと決して高くありません。胎児異常原因は前記以外に染色体異常、ウイルス感染などもありますがほとんどは原因不明です。ある一定の確率で胎児異常は起こってしまいますが薬やレントゲンでその確率を上昇させるものではなく過度に心配する必要はありません。次に腹痛、出血などですが、ナプキンに付着する程度の出血は非常に良くあることです。月経2日目ほどの出血 痛みでなければ経過観察で好いでしょう。耳鳴り、めまいも聴覚、平衡感覚をつかさどる器官が多少むくみ起こる症状です。じきに状態に体が慣れてきて気にならなくなります。ただ諸症状には重篤な病気が隠れていることもあり主治医との相談は必要です。

司会:

重篤な病気とは何でしょう?

遠藤:

出血は子宮頸癌や消化器系の癌ですね。妊娠初期には必ず子宮癌検診を行いますのですでにある癌のみならず初期癌はほとんど確実に診断でき適切に対処できるのでいいのですが、消化器系癌は一般的臨床症状である便秘、胸焼けなどは妊娠子宮圧迫症状と紛らわしく手遅れになりやすいと言われています。出血も痔だと思い込まず長引くようであればきちんと検査する必要があることがあります。耳鳴り、めまいなどは脳の病気。特に血管病変ですね。当院でも年に何人か脳出血を起こした妊婦さんを拝見します。事前に分かるのも困難なのが実情ですが、神経症状が長引く時は注意が必要でしょう。

司会:

それでは妊娠中期についてはいかがでしょう?

遠藤:

まず便秘ですが、妊娠子宮は赤ちゃんをお腹においておくために筋肉が収縮しにくい状態にありますが、子宮の筋肉と同じように腸管の筋肉も収縮しにくくなります。結果的に便が出にくくなります。便が出ないと留まった便から腸に水分が吸収されカチカチに硬くなりますます出難くなり悪循環に陥ります。でもいざ便をとどめておくのも限界に達したとき一気に便が出るように腸管が収縮するわけですが、勢い子宮筋肉も収縮したり、息んだ結果お腹がはってしまうわけです。一般的な便通をよくする食生活、つまり水分と野菜、軽い運動をすると同時に躊躇なく下剤を飲むことをお勧めしています。下剤 イコール 薬 結果赤ちゃんに影響を与える、と心配して処方しても内服をされない方がいらっしゃいますが、下剤は薬の中でもとりわけ赤ちゃんに影響は低い薬であります。赤ちゃんに対する影響を考えるよりも便秘の害を避けることのほうが断然重要です。妊娠期間のみならずお産後の肥立ちを良くする為にも重要なことかと思います。

司会:

下剤を飲むとお腹がかえって痛くなる心配をされる方もいらっしゃるのでは?

遠藤:

下剤の種類には大きく分けて便を軟らかくするだけのものと腸の動きを活発にするものがあります。軟らかくする薬は硬い便を軟らかくして便を多少ふやけた状態にして体積を増し腸管を膨らませその反動で排便を促す。と言った印象で基本的に無理なく排便できます。ただこれだけではお通じが出ない場合は腸の動きを活発にするお薬もかぶせることがあります。個人差が大きく、また各個人でも時期により状態が変わることもあります。まずは処方された量を内服していただきその後ご自分で内服量を調整してもらえば快適なお通じが出来、お腹が痛くなることはまずありません。なお浣腸は絶対止めましょう。ほぼ確実にお腹がはってきます。

司会:

次に女性にとって一番気になる体重ですが。

遠藤:

妊娠前から太っていたかどうかで体重増加の目安が変わります。Body mass index BMIという言葉をお聞きになった方も多いと思いますが、体重を身長の2乗で割った値で、分かりやすくする為に極端な数字でお示しすると 体重100kg 身長2mだと100割る2割る2でBMIは25になります。妊娠初期に25未満だと約10kgまでOK 25kg以上だと約5kgまでと考えてください。太ると何が悪いか?中毒症や妊娠糖尿病になりやすい他にお産の時に難産になったり帝王切開になったり、血がどろどろになってお産時に血が固まってしまう血栓という怖い病気になったりします。ただ最近はダイエットによりかえってやせすぎが問題になっています。やせすぎの問題点は赤ちゃんが大きくなりにくいということがあります。小さく生んで大きく育てる 小さければお産も楽 太らなければ妊娠線もできないし体型も維持できるなどと考えて一生懸命太らないようにしているお母様がいらっしゃいますが、小さくうまれた赤ちゃんは将来糖尿病や心臓病などの成人病になりやすいのではと最近言われています。昔は3000gを越える赤ちゃんは普通でしたが最近は2000g台の赤ちゃんが増えている印象があります。偏食を避けきちんとした食事をとることが自分のみならず将来の赤ちゃんを守る為にもお母さんからの最初のプレゼントと考えても好いでしょう。
他に妊娠中期の問題点として切迫早産の危険性がある。と言う事です。

司会:

切迫早産とは?

遠藤:

22週から35週までに生まれてしまうおそれがある事を言います。早産の原因としては、ばい菌などが影響してお腹がはったり出血したりして起こる場合と何の自覚症状もなく早産してしまう場合があります。後者の自覚症状がない場合は子宮頚管無力症と言い患者さんの体質が原因です。自覚がないので患者は気づき様がなく医師が外来で診察して判断します。無力症は治るものではなく次回妊娠時も影響を及ぼすため子宮の出口を結ぶ必要があります。前者のばい菌が影響している早産のポイントは出血と下り物の増加です。妊娠すると下り物は増えますがかゆみ、臭いがするなどプラスαの下り物だったり、出血が混じっていたときは要注意です。妊娠初期は多少の出血は問題なしとお話ししましたが、この時期は多少の出血でも早産のサインであることもあり早めの受診をお勧めします。

司会:

最後に妊娠後期ですが?

遠藤:

いよいよお産で喜びと同時に不安も募る時期です。お腹も大きく夜もゆっくり寝られない方も多い様です。重い、息苦しい、どきどきする などの原因は妊娠子宮による血管の圧迫です。子宮の後ろ右側には壁が弱い大きな血管があり妊娠子宮でつぶされて血の巡りが悪くなるのが原因の一つですので、左を横にして足を多少高くすると少し楽になるでしょう。病院に行くタイミングですが、妊娠回数や子宮口の広がり具合、病院までの距離により様々ですが、10分おきに規則的、が目安です。10分おきでも不規則であればまだ本格的陣痛はこないかも知れません。ただ最も重要なのは破水を見逃さないことです。破水イコール下着がビッシャリ濡れるとは限らず、尿漏れ、入浴後のナプキン濡れ程度のこともあります。破水が怖いのはそのままにしておくと知らないうちに感染を起こし羊水がどろどろになってしまう危険性があることです。迷ったときには時間を気にせず連絡いただければと思います。
妊娠10ヶ月は様々な心配があるかと思いますが外来主治医と密に相談し是非かわいい赤ちゃんを生んでいただきたいものです。


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