平成23年08月31日放送

扁桃腺について
  土浦協同病院
耳鼻咽喉科 畑中 章生
司会:

扁桃腺ってよく世間で言いますが、どういうものなのでしょうか?

畑中:

口蓋垂、、、世間で言うところの“のどちんこ”の脇に、扁桃腺が左右にあります。扁桃というのは、アーモンドの種にその形が似ているからとされています。個人差はありますが、およそ、親指の頭より少し大きいくらいの事が多いと思います。形はどちらかというと梅干しの種をラグビーボール型にしたような感じです。これらは、正式には口蓋扁桃といいます。扁桃摘出するような手術は世間では扁桃を切る、という俗語的な表現がされるようです。この扁桃腺は、アデノイドや舌扁桃というものが兄弟分のような存在で、鼻の奥、舌の付け根の奥などにも存在しており、これらはまとめてワルダイエルー咽頭輪と言われています。これらも広い意味で扁桃腺ですが、世間で扁桃腺というと、口蓋扁桃のことを指すようです。これらは、1歳とか2歳頃までは免疫組織として働いているとされていますが、それを過ぎると余り働きを持っているとは言い難く、ばい菌の感染の巣になったり、大きくなりすぎると睡眠時無呼吸症候群の原因になることもあります。

司会:

じゃあ、むしろ取ってしまった方が、良いことづくめなんですね?

畑中:

確かに、特に乳幼児期を過ぎてある程度の年齢になれば、扁桃腺がのどにあっても役に立つことは殆どありません。

司会:

じゃあ、みんな片っ端から取ってしまえばいいのかな、と、我々としては思ってしまいますが、どうしてそうはしないのでしょうか?

畑中:

まず一つは、人の体にメスを入れるような手術をするときには、当然のことながら、そのような痛み、時間、費用などのデメリットを当然ながら超えるメリットがあると考えられた場合に手術をすることになります。簡単なたとえならば、誰もお腹を切られたくなんかありませんが、癌があればそれでもお腹を切って悪い部分を取るという手術をするわけです。だから、扁桃腺がある程度のデメリットをそのヒトにもたらす場合に手術をするかどうかを検討することになります。実際に扁桃腺を取る手術をすると、ふつうはその傷が喉の奥でむき出しになったままになります。なので、術後にかなりのどが痛くなります。また、傷が治る課程で、数日たってから術後出血を来すことがあります。そのため、術後は1週間程度入院を継続して、出血がないことを確認する必要があります。そういう話を聞けば、だれでも気楽に扁桃腺を取るというわけにはいかないことが納得頂けるでしょうか。歯医者さんの外来で歯を抜くよりはだいぶん大変だと思います。この手術の原型は紀元前からなされていたという記載があるようです。しかし、現代の医学レベルでも、ごくごくまれではありますが大量に出血して死亡するような事例もありますので、患者さん側も医師の側も決して安易に行うべき手術ではないと思われます。しっかりと適応を見極め、手術をする理由として充分なものがなければそれをするべきではないと思います。

司会:

では手術を進めるレベルの、扁桃による障害はどのくらいのことを指すのでしょうか?

畑中:

扁桃腺を取る理由としては、主に、@1年に数回程度繰り返す扁桃炎の原因になってしまっているときA大きくてつかえてしまい、睡眠時無呼吸症候群の原因になるときBまれに、IgA腎症という腎臓の病気になったときには、やはり腎臓の状況の悪化を防ぐために扁桃腺を取ることがあります。これらが主な扁桃腺を取る理由でしょうか。まれに悪性腫瘍、がん、ができることもありそのような場合は今回の説明とは切り離して考えて貰いたいと思います。

司会:

実際にはどういう症状があるときに耳鼻科の先生に相談したらいいのでしょうか?

畑中:

具体的には、扁桃腺が大きいと医師に指摘されたことがあり、さらに、家のヒトがいびきが酷かったり、夜中に域がつかえて止まっている時間があるようなときには、相談する理由の一つになると思います。お子さんで寄るがよく眠れないような場合には、扁桃腺を取ることで、非常にいびきが静かになり、昼間の落ち着きが出て、成績が上がるなどの可能性を示す研究テーマなどもあるようです。夜、いびきや無呼吸で熟睡できていないと思われるお子さんは特に、早めに耳鼻咽喉科で相談をしてみてください。
 また、他の理由でも手術の適応と判断される場合があります。習慣性扁桃炎という状態ですが、1年に何回も繰り返し喉が痛くなって、近所の内科の先生、耳鼻科の先生にその都度、扁桃炎の診断を受けるようならば、耳鼻咽喉科の専門の先生に手術をした方が良いかどうか相談をして頂ければよいと思います。扁桃腺が原因の場合には以後、すっきりと扁桃炎が再発しなくなります。元モーニング娘の保田圭さんはこの病気で扁桃腺を取ったことを公開しています。インターネットに公開されている日記でその様子を見ることができます。IgA腎症の場合にはそのような腎臓の病気になってしまった場合に、腎臓の内科の先生からそのような治療のプランの提示があると思われますので、その場合に検討をしたらよいことでしょう。

司会:

扁桃腺にはそのほかに病気などが生じることはありますか?

畑中:

大きな病気ではありませんが、魚の骨が喉に刺さる場合は、まず扁桃腺を探します。ウナギやイワシ、サンマなどの比較的柔らかい骨は扁桃腺に刺さりやすいと言われています。もし、飲み込むたびにちくちくするような事になってしまった場合には、決してご飯の丸呑みなどはしないようにして、水だけを飲むようにして、翌日に耳鼻咽喉科の専門の先生に相談をするようにしてください。昔のとげ抜き地蔵というのは魚の骨が喉につかえて死ぬ人が多かったのでこのようなお地蔵をつくって、無事を願ったと言い伝えられています。現在でも時々、喉に刺さった魚の骨を放置してクビが腫れてしまい生死をさまようヒトが時々いらっしゃいますので、魚の骨を喉につかえたときには、それ以降は固形物を食べずに、開いている耳鼻咽喉科専門医にかかるようにしてください。ご飯の丸呑みなどをしなければ通常は翌日の受診でも大丈夫だと思われます。しかし、症状があるならば決して長い間放置してはいけません。
 他には、ある程度年を取った方の扁桃腺には、袋ができやすくなります。余り病的な意味はなく、またどんどん大きくなると言うことは通常無いようです。一度は耳鼻咽喉科専門医の診断を受けることを進めますが、それ以上の処置は必要ではないようです。同じように白い食べ物のカスのような物が溜まることもありますが、通常は病気と言うほどの物ではないことが殆どです。

司会:

先ほどは癌についての話も少し出てきましたが、扁桃腺にも癌ができることはあるのでしょうか?

畑中:

扁桃腺はリンパ組織なので、時々悪性リンパ腫というリンパ節の悪性腫瘍ができることがあります。正式な表現ではありませんが、血液の癌が扁桃腺にできることがあると思えばわかりやすいかもしれません。そのほか、普通の本物の癌ができることもあります。ただし、その頻度はごくまれです。ヒトの体には、すべての場所に悪性腫瘍が生じることがあります。扁桃腺も例に漏れません。それ相応の治療が必要になります

司会:

そうですか、扁桃腺と一口に言っても色々な病気があるんですね、、、、(以後はお任せいたします)


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