平成17年09月28日放送

ペースメーカーって何?
茨城西南医療センター病院
内科部長 前田裕史
司会:皆様は、ペースメーカーという言葉を、一度は聞いたことがあると思います。しかし、どういう機械で、どういう働きをするのかといったことまで知っている人は少ないのではないかと思います。ここでは、ペースメーカーによる治療と、注意する点についてうかがいたいと思います。まず、ペースメーカーとは、どのような病気の治療に使われているのでしょうか?
前田:現在、日本では推定40万人の方が、ペースメーカー治療を受けておられ、2004年には約3万人の方が新たにペースメーカーを体内に植え込む治療を受けています。茨城県内では2004年には517人の方が新規にペースメーカーの植え込みを受けられています。心臓は、本来心臓自身で弱い電気を発生させて、この電気が心臓全体に伝わり心臓を構成する筋肉を刺激し、心臓が拍動するようになっています。ところが、この電気の発生が少なくなったり、消失したりすると心臓の拍動が減少、停止してしまうことがあります。この病気は「洞不全症候群」と呼ばれています。また、心臓内の電気の伝わりが悪くなり心臓の拍動が消失する「房室ブロック」と呼ばれる病気もあります。これらの病気で心臓の拍動がなくなると、心臓が頭や体に血液を送れなくなりますので、体がだるくなったり、意識を失ったり、最悪の場合には死に至ってしまうことがあるのです。これらの病気の治療に用いられるのがペースメーカーです。
司会:ペースメーカーはどのような機械なのでしょうか?
前田:マッサージ器のひとつに、電気を流し体の筋肉を動かすものがありますが、これと同じように心臓の筋肉も電気刺激を与えると収縮をおこします。この原理を用いたものがペースメーカーで、心臓が自分自身で電気刺激を出さなくなったときや、電気を伝えられなくなったとき、代わりに電気刺激を送る装置なのです。体の表面からこの電気刺激を心臓に送ろうとすると強い電気が必要となり痛みが出るので、ペースメーカーでは、心臓に直接電線をいれ、弱い電気で刺激を与えます。したがって、痛みや電気の流れた感じはまったくありません。電気を発生させるための装置は、電池と電気を送る指令を出す小さなコンピューターから構成され、大きさはマッチ箱程度、重さは40−100グラムで、体内に植え込んで使用します。
司会:ペースメーカーは体内に植え込むということですが、手術が必要なのでしょうか?手術となると何日ぐらい入院が必要ですか?
前田:ペースメーカーを植え込むための手術は、局所麻酔で行い、1時間ぐらいで終わります。通常、前胸部の皮膚に5cmの切開を入れ、装置が入る大きさに皮膚を剥離しそこにこの装置を植え込みます。心臓に入れる電線は、鎖骨の下を走る血管から刺し入れ、レントゲンでみながら血管内を進め、心臓の内腔に留置します。入院期間は1週間以内です。
司会:植え込んだ後の管理はどのようなものでしょうか?
前田:皮膚の下に植え込んだペースメーカーは、患者様の状態に合わせて、電気の出る回数や、出力を調節する必要があります。その調節は、テレメトリーとよばれる装置を、植え込んだペースメーカーのうえに置くことで体の外から操作できます。植え込み後は、3−6ヶ月毎にチェックし電池の残量やペースメーカーの作動状況を確認し、そのときの患者様の状態にあわせ器械を調節します。電池の寿命は、4−7年ぐらいで電池残量がなくなる前に、ペースメーカー本体を交換します。このときも数日の入院が必要となります。ペースメーカーを植え込んだ人は、植え込み直後の1ヶ月ぐらいの間、植え込んだ側の腕を高く挙げないといった注意が必要ですが、その後の生活は手術前と変わりません。ただ、激しく手を動かす運動は避けたほうがいいでしょう。
司会:ペースメーカー入れると携帯電話が使えないと聞いたことがあるのですが、本当でしょうか?
前田:近年携帯電話や電子機器がいたるところにありこれには注意が必要です。携帯電話や電磁調理器の周囲では強い電磁波がでるためペースメーカーに誤作動を与えることがあるからです。携帯電話は、通話時やメールの発信受診時に特に強い電磁波が出ますが、電源を入れておくだけでも、定期的に位置確認の電磁波が出ています。通常の携帯電話であればペースメーカーから22cm以上離してください。そうすれば患者様自身でも携帯電話を使用できます。
司会:携帯電話以外に注意をしなくてはいけないものはありますか?
前田:火を使わないコンロと呼ばれている電磁調理器やIH炊飯器では、その機器の使用中は近づかないようにしてください。お店の出入り口に盗難予防のゲートを設置しているところがありますので、出入り口で立ち止まることは避けてください。空港の手荷物チェックでは、ペースメーカーが入っていることをあらかじめ係官に申し出るようにしてください。車やバイクのエンジンからも、電磁波が出ています。アイドリング中の車のボンネットに座ったり、バイクのエンジンに体を近づけることはしないようにしてください。大型バスのエンジンは後方にあるため、バスに乗った時は後部の座席は避けるようにしてください。また、電磁波を遮断する機能のついたシャツが売られています。人の多いところに出る場合には、このシャツを着ることで安心して仕事ができます。このシャツは、一般には手に入りにくいので、ペースメーカーを管理している医師に相談してください。
司会:ペースメーカーを使用していない人が注意することはありますか?
前田:はじめに申しましたように、日本では40万人以上の人が、ペースメーカーを使用しています。ペースメーカーを入れていても健常者と同じように活動している人が大半です。ペースメーカーを使っているかどうかは外見からでは判断できません。したがって、電車やバスに乗ったらその中にペースメーカーを使っている人がいると考えてください。ペースメーカーの使用者が注意するだけでは安全を守りきれないので、優先席付近での携帯電話の電源を切るという最低限のマナーを皆が守るようお願いします。

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