平成17年06月21日放送

輸血と臨床検査
取手協同病院
臨床検査技師部長 平沢 博
司会:輸血はどのようなときにおこなわれるのでしょうか?
平沢:血液は心臓のポンプ作用によって全身を循環しています。酸素や老廃物を運んだり、体温を調節したり、人が生きていく上で重要な役割を果たしております。ところが、重度の貧血や事故などの急な出血、手術中の出血などで大量の血液を失うと人は命の危険にさらされます。そのような時に患者さんの状態を改善させる一手段として輸血という治療方法があります。輸血は最近になって必要な成分(赤血球、血小板、血漿)だけを輸血する成分輸血が輸血療法の基本となってきております。赤血球製剤は慢性貧血などの血液中の赤血球が少ない人の治療に、また手術時の出血に対して用いられます。血小板製剤(濃厚血小板)は、血液中の血小板の少ない人、または出血に対する止血目的で用いられます。血漿輸血(新鮮凍結血漿)は血液の凝固因子が減少している人、また血液中の血漿成分が急激に減少したときに用いられます。輸血血液は善意による献血から製造されるため、有効に用いられなければなりません。医療機関においては、いろいろな検査をして患者さんに合った血液を用意する義務があります。また、手術が予定されていて自己の血液を輸血用血液として使用する方法も最近おこなわれるようになりました(自己血輸血)。
司会:輸血のまえにはどの様な検査があるのでしょうか?
平沢:血液型の検査、不規則性抗体スクリーニング、クロスマッチの3つの検査があります。
1.血液型検査:患者さんの血液型を判定します。特に医学上問題となるA、B、O、ABの型とRh(+)か(−)の型を調べる必要があります。輸血においては基本的には患者さんと同じ血液型の輸血をするため、この検査は不可欠です。
2.不規則性抗体スクリーニング:人の体にはABO、Rh以外の血液型が30種類以上あると言われております。そこでそれらに対する抗体を検出します。過去に輸血したことのある人や妊娠がきっかけでまれに体に害をおよぼすような抗体が出来てしまう場合があるのです。このような抗体を不規則性抗体といいます。この抗体を持っている患者さんに、この検査をしないで輸血してしまったならば、致命的な溶血性副作用を引き起こす可能性があります。そのため不規則性抗体を調べて、その存在を確認する事が必要です。溶血性副作用とは、血管内で赤血球がたくさん壊されることにより、血圧の低下、腎不全などがおこることをいいます。
3.クロスマッチ:交差適合試験ともいいます。血液型検査・不規則性抗体スクリーニング検査を踏まえたうえで、今度は血液センターから取り寄せた患者さんと同じ血液型の輸血用血液を使って検査をします。患者さんの血液と輸血用の血液を試験管のなかであわせ、さらにその中に感度を増強させる試薬を加えて37℃(人の体温に近い温度)に保って、試験管を振って凝集や溶血がおこっていないかを確認します。この検査で凝集や溶血が認められたならば、この輸血用血液は使用出来ません。しかし前もって不規則抗体スクリーニング検査で何らかの抗体をもっていることが分かっていれば、これが含まれていない血液を血液センターより取り寄せて使うことが可能となります。クロスマッチは危険な副作用を最少にとどめる重要な検査であります。
司会:どのようなときに自分の血液を輸血するのでしょうか?
平沢:献血による輸血ではなく、自分自身の血液を輸血する方法(自己血輸血)があります。献血による輸血用血液は十分な検査を行っていますが、ときには副作用を起こすことがあります。この副作用を回避したり、人の血液によって感染するB型・C型肝炎やHIV感染等の危険を避けるのに自己血輸血は有効です。また、まれな血液型やすでに免疫抗体を持っている人にも有効です。自己血輸血にはいろいろな方法がありますが、一般的に最も多く用いられている方法は貯血式自己血輸血です。これは、手術がすでに予定されている場合、手術前に患者さんから採血を行い、血液を手術中あるいは手術後に輸血する方法です。血液によってうつる感染症や免疫反応による副作用のリスクはありませんが、採血できる量には限界があります。また保管・管理などに人手がかかります。予想以上の出血があった場合には、献血による血液製剤を使用しなければならない場合もありますし、予想より出血が少なかった場合には自己血はやむを得ず廃棄されます。
司会:自分の血液でも検査は必要なんでしょうか?
平沢:自己血採血をする前には、年齢・体重・血圧・血球計数検査(貧血の有無や白血救数、血小板を見る)・血液型検査・不規則抗体スクリーニング検査・ウイルス検査等をおこない患者さんの前身状態が一定の基準に達していることを確認します。採血された血液は温度管理をされた専用冷蔵庫で使用するまで保管・管理され、手術前に本人の血液であることを確認するために交差試験を実施します。
司会:自己血でも問題があるのでしょうか?
平沢:自己血輸血はメリットばかりでなく、デメリットもあります。まず、採血することによって起こる貧血があります。自己血は主として1週間に1回の割合で200から400ml採血するので多少貧血になります。これに対しては鉄剤やエリスロポエチンという造血剤を用いることで対処します。
司会:輸血が必要なとき、主治医の先生から説明がありますか?
平沢:通常、輸血を行う可能性があるときに、患者さんは主治医から輸血の必要性・目的・効果・副作用・輸血をしない場合の危険性などの説明を受け、患者さんの同意をもとにおこなわれます。自己血輸血においても、患者さんの同意をもって採血計画が立てられます。輸血後に発熱やじんましんが起こる場合があります。輸血は「ほかの人の細胞移植」と考えられているため、ある程度の副作用は避けられません。輸血が開始されたならば、必ず医師または看護士がベッドサイドで定期的に観察をしていきます。
司会:輸血後の安全性はいかがでしょうか?
平沢:献血で得られた輸血用血液の安全性を確保するために、ABO・Rh血液型、不規則性抗体スクリーニング検査のほかに、梅毒検査・B型・C型肝炎・HIV抗体などの検査がおこなわれています。輸血後も、このような感染症検査を定期的に行うことが義務づけられました。輸血は献血をしてくれる人たちがいてこそ可能な医療行為です。大切な輸血血液が有効に活用され、患者さんの安全のため、病院検査部は一層のの注意を払って輸血用血液を取り扱わなければならないと思います。

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