平成17年04月27日放送

「小児の自閉症について」
なめがた地域総合病院
小児科科長 鈴木 直光
司会:自閉症とはどういう病気ですか?
鈴木:発達障害の1つに分類されていて、1943年にアメリカで初めて報告されました。特徴として、1つめは人との相互交渉の障害、つまり対人関係が薄い・共感性が乏しい・視線が合いにくいなどがあり、2つめはコミュニケーションの障害、つまり話し言葉でのやりとりが特に苦手で会話にならないのです。3つめは想像力の障害、つまり順番などの見通しがつかない・応用力が利かないなどのような特徴を持ち、さらに4つめには反復的活動、いわゆる常同行動および非常に関心の幅が狭く、こだわりを持ち、様々な感覚や感性の違いがある病気です。
司会:具体的にはどんな症状が見られるのでしょうか?
鈴木:道順の記憶がいいこと、こだわりとして換気扇など回転しているものをジッと見ていることが多いこと、線上にきれいに並べて順番を入れ替えるとわかってしまうこと、なんでも1番がいいこと、数字や文字の形に興味があり車の車種やマークなどをよく知っていてカタログ的知識があること、音・風・臭いに敏感なこと、落ち着きがなく別の集団に勝手に平気で入ってしまうこと、手をヒラヒラさせるような同じ動作を繰り返す常同運動があること、自分の頭をたたく自傷行為、他人にかみつく・たたくなど他傷行為があること、三輪車がこげない、見知らぬ人に話しかけるなどのような症状がみられることが多いです。
司会:車やマークが好きなお子さんも多いと思いますが、それだけで自閉症と言えるのでしょうか?
鈴木:もちろん子どもはみな電車や車などオモチャに興味を持っています。ここでいうこだわりは病的で、単純にただ覚えていることが多いのです。内容や相互の関係についてはわからないのです。ただこれだけで自閉症と診断されるわけではなく、先ほど述べたような事柄で6つ以上あてはまり、3歳以下の発症という詳しい診断基準があります。
司会:小児科を受診すれば診断はつくのでしょうか?
鈴木:小児科医でもこの病気の概念を知らない先生も多く、かなりのケースが見逃されている可能性があります。町の健康診断でも見逃されがちです。それは、この病気が血液や尿検査のような生物学的指標では判断できず、診断基準を元に親や学校の先生に尋ねて判断しなければならず、時間と専門的知識を要するという背景があるからです。またそれを診断できる小児神経科専門医も少ないのが現状です。また、多動を合併しやすいため当初はADHDやLDと診断されているケースもありますが、診断基準としては自閉症が優先されています。
司会:自閉症の頻度はどのくらいですか?
鈴木:有病率は小児の0.2%、500人に一人の割合です。また男女比は4:1で、男児に多い傾向があります。
司会:広汎性発達障害との違いは何ですか?
鈴木:自閉症は広汎性発達障害の中に含まれています。リンゴにたとえると芯に相当する所が自閉症で、実の所が広汎性発達障害に相当します。従来の自閉症や広汎性発達障害はIQ70未満で精神遅滞を合併しているのに対し、IQ70以上で精神遅滞を呈さない自閉症や広汎性発達障害を高機能として区別しています。
司会:発症の時期ですが、いつごろから起こるものなのですか?
鈴木:以前は、よく母親のしつけのせいにされることがありましたが、現在では、親の育て方が悪いわけではなく、先天性のものと考えられています。診断基準では3歳までに発症するといわれています。ただ、高機能の自閉症および広汎性発達障害の場合は、就学後に気づかれ、いじめられていることが多く、教育委員会で問題になることがあります。
司会:最近の報道でアスペルガー障害という言葉を耳にしますが、自閉症の一種なのでしょうか?
鈴木:はい。先ほどお話した高機能広汎性発達障害の内、3歳で二語文があり、コミュニケーションのみられた場合、アスペルガー障害として区別しています。こういうお子さんは知能障害がないので特殊学級ではなく、最近は普通学級あるいは情緒障害学級で対応するようになりつつあります。ただ、友達とのトラブルが多く、多くの教育現場では病気に対する理解と対応がわからず混乱している状態です。そのためには早く診断・告知し、早期に療育していく必要があります。
司会:自閉症は治るのでしょうか?
鈴木:先ほども述べたように、先天性の病気と考えられており、治ることはありません。最近はアメリカのノースカロライナを中心に発展したTEACCHという概念が有名です。病気を治すことではなく、周囲の理解を増やし、患児に対してサポートを入れることが基本理念です。教育でもTEACCHを積極的に取り入れて、視覚的構造化を確率させていくことが重要と考えています。
司会:視覚的構造化ですか?
鈴木:そうです。わかりやすく言うと、1日のスケジュールを図示して順番に書いて示したり、色で区別したり、言葉で言うだけでなく目の視覚に訴えることです。例えば東京へ行くとき山手線といってもわからなければ緑色の電車といえばわかるときがあります。これも構造化の1つです。実は既に現代社会でも様々な形で使われています。自閉症にやさしい社会は我々一般人にもやさしいのです。
司会:他に何か治療法はあるのでしょうか?
鈴木:今のところ特効薬はありません。幼児期には言葉の遅れで初めは気づかれることが多いので、言葉の教室などに通っている方が多いです。医療としては、他傷行為が激しいかまたは、状況認知が乏しい場合、当院では投薬も行っています。またリハビリテーションの方では感覚統合訓練があります。自分で回転して自己刺激をしているお子さんや、つま先歩きをして重力不安のあるお子さんには有効なことがあります。当院では平成18年度にオープンするリハビリテーションセンターで作業療法士(OT)により小児の感覚統合プログラムを開く予定です。専門の技術を講習会で修得した限られた作業療法士しか行えず、茨城県内では数箇所でしか行っていません。

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